スケッチの良いところはスピードだと常々思っています。
人は感覚を持ちながら生きており
常に変化しています。
感動の痕跡を残す事がスケッチの美徳とするならば
そのエモーショナルな感覚があるうちに
画面にすばやく表現すること。
それこそがスケッチさらに言えば美術の表現上
重要な事柄だと私個人として認識しています。
食べ物にも、情報にも、あるいは恋愛や
様々な事象も含めて感動には鮮度があります。
作家はとりわけ自身の経験や感動など
エモーショナルな経験を動機として創作を行うのですが、私としては、その動機の鮮度を失う事を一番に恐れます。
技巧的なプロセスで作品の質を高めたり、
見る人に対し技術で圧倒的な征服を行うことよりも、
私は感動の鮮度があるうちに、画面に留めたい。
そう思っています。
いま取り組んでいるブルースケッチはまさに
それを具現化するものです。
下書きなし、一発勝負、現場でのスケッチの原則は
そのままに、絵の具と筆で一気にスケッチすることで、
空間と光の量、いわゆる全ての視覚的状況を
すばやく一気に表現できてしまうのです。
また色相を一つに限定することで、過剰にエモーショナルになりすぎる自身を客観視し、同時に表現速度を上げることを狙っています。